AIの反乱よりも恐いもの?

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天才科学者として名高いスティーブン・ホーキング博士が「AI(人工知能)の進化は人類の終焉を意味する」と、警鐘を鳴らしたことは記憶に新しい。博士曰く

AIが自分の意志をもって自立し、そしてさらにこれまでにないような早さで能力を上げ自分自身を設計しなおすこともあり得る。ゆっくりとしか進化できない人間に勝ち目はない。いずれはAIに取って代わられるだろう。

つまり、いつかは、人間によってつくられたAIが、自らを改良して、人間の手に負えない恐ろしいモンスターとなって人間を滅ぼすだろう。と、博士は真顔でおっしゃっているというわけなのですね。

そんな!ハリウッド映画じゃあるまいし!?と思わずにはいられないわけだけど、たしかにAIの進化のキモになるのは、人間による情報入力には頼らず、確固たる自立性のもとで、人間にはできないようなスピードや規模で思考していくのがAIであるのならば、進化のある特異点を超えてしまったら、そういうこともあるのかもしれない。まあ、なんせIQ160を誇るホーキング博士がおっしゃっているわけですからねぇ。

さて、ところで、今、AIに最も力を入れている企業はどこだかご存知だろうか。AIだから、家電メーカー?それとも産業ロボット分野の企業?いや、やっぱりそれは軍事産業関係の企業?

惜しい、でも、違うんですね。

実は今最もAIに力を入れている企業は、IT業界の覇者であるグーグルだったりする。たとえば、車の自動運転なんかは、永ちゃんのテレビCMの「やっちゃえ、日産」でおなじみなように日本の自動車メーカーも本格的な開発を進めているけれど、世界ではじめて本格的な開発に着手したのは自動車メーカーではなくグーグルだった。そして今もこの分野のトップを走っているのはグーグルなのである。

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そんなグーグルはここ数年、AI関連の企業やロボットメーカーをすごい勢いで次々と買収している。いったい、どこへ向かおうとしているのか?もちろんそんなことをグーグルは明かしていないけれど、グーグル・ウォッチャーらの推測によるならば、最先端のAIテクノロジーの粋を集めたAIを開発し、その次世代型AIとクラウドでつながったサービスロボットを、世界中の家庭やオフィス、工場などに送り込もうとしているとのことだ。また、AIにはAI用のOS(基本システム)がある。当然、グーグルはそこも押さえようとしている。アンドロイドでスマホの圧倒的なイニシアティブをとったように(日本だとiOSがまだ強いけれど、世界ではアンドロイドはシェア8割超えである。)、AIでもそれをしようとしているのである。

さて、そこで思い出して欲しい。かつてビジネス界でも話題となった、グーグルがかかげるミッションを。

「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使えるようにする。」

このミッションがかかげられた2004年当時では、まだビッグデータなんていう言葉も世間では聞かれなかった。でも、ビッグデータをいかに解析していくかが、大企業のマーケティングの普通の課題となった昨今、さらには、身のまわりや社会のさまざまなものがインターネットとつながり、ネットワーク化する、いわゆるIoT(Internet of Things)が、近い未来の鍵をにぎることがわかってきた昨今、グーグルのこのミッションはいよいよ迫力ある言葉として浮上してくる。

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グーグルが市場に投入しようとしているとされる最先端のAIクラウドとつながったサービスロボットは、たとえば家庭用ならば、あらゆる暮らしの機能とつながった、意思をもって人とコミュニケーションできる情報デバイスとして、暮らしの利便を画期的に向上させるだろう。しかしそれは同時に、世界中の家庭からビッグデータを収集するデバイスでもあるのだ。収集されたビッグデータが次世代型のAIによって解析され、AI自体の精度を高めていき、それがまたグーグルのサービスの精度にフィードバックされていく。IoTが実現するのはもちろん家庭だけではなく、社会のあらゆるサービス、産業でIoT化していく。しかもその要となるAIOSをもグーグルが押さえていたとしたならば

まさにオセロのコマが一気に裏返されていくかのように、さまざまな業界のあり方がグーグルによって根本から塗り替えられていく、そんな未来が見えてくるのである。

じゃあ、そんな未来とは、どんな未来なのだろう?たぶん、今とは比較にならないような“いたれりつくせりな未来”になるのではないか。なんせ、車が自動運転になるような未来なのだから、それ以外のさまざまなものも自動化されているのだろう。当然、それらのものは巨大なAIクラウドにつながっているのだから、なんでもかんでもAIが先回りして判断してくれるような、「困る」ということがないような社会になるのではないか。あの余計なお世話といいたいネット広告だって、もしかしたらすごく気の利いたものになっているかもしれない(笑)。でも、どうなんだろう?そういう社会って。ぼくはそういう社会だとしたら、ちょっと恐い。そんなふうな、いたれりつくせりな社会で生きていくうちに人間は、いわゆるゆでガエル現象の鍋の中のカエルのごとく、ゆっくりと知らない間にあらゆる判断能力をにぶらせていき、やがては、まったく自立できない役立たずの生物になっていくみたいな…、そんなことを思わずにいられない。「サバイバル」なんていう言葉はもはや辞書の中にしか存在しない、AI完全依存な社会。ホーキング博士が警鐘を鳴らした未来はまだしばらくは来なさそうだけれども、そんな近い未来は、なんだかリアル感をもって想像できるのだ。怖いですねぇ。それとも、妄想しすぎですか?

 

 

2016-07-27 | Posted in マーケティング, 雑感No Comments » 

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