「が」じゃなくて「で」。

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無印良品を知らない人はいないと思うけど、じゃあ、その誰もが知っている無印良品のビジョンを知ってますか?それは「が」じゃなくて「で」という商品開発のポリシーを高いレベルで実現し続けること。

このビジョンが無印良品の二代目クリエイティブディレター原研哉氏によって考えられたのが2001年のこと。

2001年といえば、日本ではディズニーシーがグランドオープンした年。当時はそんなことになるとは思わなかったけれど、バブルが崩壊し、後に失われた20年と呼ばれるようになる大不況時代に突入して7年目をむかえたころである。

さて、じゃあその「が」じゃなくて「で」とはなにかというと、「が」は、はっきり主張する言葉。「で」はどちらかというと一歩引いた言葉。

たとえば、なに飲む?って聞かれたときに

「ビールがいいな」っていうのと「ビールでいいや」っていうのは、なにげにニュアンスが違いますね。

これが消費活動の言葉になると

バッグはエルメスがいい。ヴィトンがいい。といった、ちょっと欲望モードが入った言葉になってくる。

それに対して、バッグ?こだわらないからイトーヨーカドーとかでいいや。とか、う~ん、ニッセンのバッグでいいや。とか、「で」は、なんだかどうでもいいような妥協の言葉になってくる。

つまり「で」は、そんな消極的な言葉だったりするわけなのですが、無印良品はその「で」の価値を高めていこうと考えたわけです。

どうやって高めていこうとしたのか?

それは簡素さのなかに新しい価値観や美意識を生み出していくような商品開発をしていくこと。そのためにプロダクトデザイナー陣に深澤直人氏やジャスパー・モリソン氏といった、すぐれたクリエイターを惜しみなく投入していった。それによって、これまで「ま、これでいいや」って感じだった消極的な「で」を、ん?無印良品ってなにげにデザインいいし、高くないし、シンプルで、余計なものついてないし、なんかいいねえ「うん、うん、これでいいじゃん」みたいな積極的な「で」に変えていったというわけです。

そんなふうに、それまでは低価格を売りにしていた無印良品が、安くはないけど手頃な値段でデザインがいい。使っていてシンプルで気持ちいい。といった「で」の価値を高めていく方向に舵をきっていったわけなんですね。

さて、この「が」じゃなくて「で」という考えかた、15年の月日がたった今でも有効というか、今こそ「で」を高めていくべき時代ではないかと思うわけです。この「で」を高めていくということは、たんに質のいいお手頃価格のものをつくろうということではなくて、たとえば無印良品がデザイン性を高めることで、“簡素さ”を美意識にむすびつけていったように、これまではそれほど価値が見出されていなかった領域に新しい価値観を生み出していく「で」の高めかたがポイントになってくる。「うん、うん、これでいいじゃん」と思える部分の“方向性”にこだわって、そこにあらん限りの知恵を絞っていく。そんなスタンス。昨今、地方再生ブランディングが盛んになってきているけれど、まさにこの分野なんかは、そんなスタンスが結果を出していくのではないだろうか。

「が」じゃなくて「で」にご興味ある方は原さんの「デザインのデザイン」をぜひご一読を。

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