シャルルの幻想の島

ss1s
以前、このブログでシャルル・フレジェのことを書いたご縁で、WOWOWさんからドキュメンタリー「シャルルの幻想の島」の番組試写用DVDが送られてきた。シャルルの名は日本ではまだそれほどなじみがないけれども、ヨーロッパ各地の伝統的な祝祭に登城する獣人(ワイルドマン)を撮った写真集「WILDER MANN」で、その名を世界に知らしめたフランスの気鋭の写真家である。

「WILDER MANN」で大成功を収めたシャルルは、日本にもナマハゲのような、獣人に通じる仮装文化があることを知り、はるばる海を渡ってやってきた。日本の仮装文化を撮ることで、そこに「WILDER MANN」と通底する普遍的なものを探ろうとした。それが当初のシャルルの狙いだった。
ところが撮影を続けているうちにシャルルは、ヨーロッパの仮装文化との微妙な違いを感じるようになった。それはなにか?仮装をする人たちのスタンスの違いである。ヨーロッパの獣人仮装が、獣になろうとしているのに対し、日本の仮装文化は、なりきるというよりは、演じているようなところがあった。そして、獣人というよりは、なんと呼んでいいのかわからない得体の知れないキャラクターが次々と現れてくる…

これ以上書くとネタバレになってしまうので控えるけれども、番組が俄然面白くなっていくのは、そんなふうにシャルルが想定外の違和感を感じ取るあたりからである。まるで見えない迷宮に入っていくかのように、そして時に宗教的な壁にも阻まれながらも、シャルルはそこに写真家としての答えを見出そうとする…

1年以上にわたって続けられたシャルルの撮影は写真集「YÔKAÏNOSHIMA」として完成する。ドキュメンタリー「シャルルの幻想の島」は、余計なナレーションも演出もなく、シャルルの背中を忠実に追いかけたものだ。だからこそ生々しいものがあり、シャルルの戸惑いや迷いを共有できる。そこがこのドキュメンタリーの“見どころ”だろう。そういえば、昔々、角川映画のキャッチコピーに「読んでから見るか、見てから読むか」なんていうのがあったけれども、シャルルの「YÔKAÏNOSHIMA」もまさにそれだ。制作過程までを知ることで、より深く楽しめ、また、日本人であるぼくたちは、自分たちが暮らすこの日本の伝統文化を異邦人の驚きの視点でもって眺めることができるのだから。

ドキュメンタリー「シャルルの幻想の島」
9月28日深夜1時~再放送予定

 

2017-09-25 | Posted in アートのことNo Comments » 

関連記事